恋は死なない。

 一緒にみる夢




幸世の明るい笑い声の余韻が残る中で、和寿がぽつりとつぶやいた。


「あの人は、また……、からかったんだな」


多大な緊張が解けるとともに、佳音がため息のような息を漏らすと、和寿もホッとして佳音と目を合わせた。


「さて、僕は夕食の買い物に行くけど。天気もいいから、君も一緒に散歩するかい?」


幸世が来る前、深刻になりつつあった二人の間の空気を蒸し返さないために、和寿は敢えて明るく佳音を誘った。
佳音は小さくうなずいた。気分転換が必要だったし、何よりも和寿と二人で並んで歩くことが、佳音は大好きだった。



お腹に赤ちゃんがいることもあって、和寿はいつも佳音の手を曳いて、些細な段差にも気を配り、とても佳音をいたわってくれる。外を歩くと、工房の中で感じるものとはまた違った、和寿の深い優しさが沁みてくる。


秋が深まり、紅葉した街路樹が傾いた日に照らされて、その色をいっそう鮮やかにさせて二人の目に映った。

佳音が一人でこの道を歩いているときには、こんなふうに移りゆく季節を感じることなんてなかった。目に映るものが、こんなにも心に響くものだとは思いもしなかった。

すると、和寿も同じことを思っていたのだろうか。晴れ渡った真っ青な空を見上げながら、つないでいる佳音の手をギュッといっそう力を込めて握り直した。


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