恋は死なない。

 共通点




食事を終えると、佳音はすぐさま立ち上がって、片づけは和寿の手を煩わせないようにした。食器をシンクに下げ、食後のコーヒーを淹れる。

そのコーヒーカップをテーブルに置いた時、和寿は、壁面を覆うように設えられた薄い棚にいくつも並ぶフォトスタンドを、一つ一つ眺めていた。


「……この写真は、全部あなたが作ったウェディングドレスですか?」


「はい。この工房を開いてからのものよりも、前の職場にいた時のものが多いかもしれません」


「前の職場…?」


和寿が佳音を顧みて、首をかしげる。


「服飾の専門学校を出てから3年ほどは、ブランドの工房で働いてて、オートクチュールのドレスも作らせてもらってました」


「そうですか。やっぱりそう言うところで技術を磨かれたんですね」


和寿は納得するように頷いたが、佳音は苦い思いでそれを聞いた。


修行をするには、3年間というのは短すぎる。それでも、佳音がそこを辞めてしまったのは、人間関係に疲れてしまったからだ。

別に、いじめられていたわけではない。大勢の人の中に自分を置いて良好な関係を築く…ただそれだけのことが苦痛だった。


「一口にウェディングドレスといっても、いろんなものがあるんですね……。あれ?これは森園さんですか…?」


一通り写真を眺めた和寿が、1枚の写真に目を止めた。



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