オフィス・ラブ #0
「大塚」
帰るぞ、と声をかけると、しっかりとカタログを手に入れて、こちらへ駆けてくる。
「どこ行きますか、次」
「どこ行きたい」
まだ午後も早く、たっぷり時間がある。
訊ねると、少し考えて、西、と答えた。
「西に、行けるとこまで行きましょう」
温和かと思えばいきなり怒りだし、しっかり者かと思えば意外とすぐ泣く。
そして時折、あぜんとするほど大ざっぱになる。
恵利といるようになって、笑うことが増えた。
「了解」
駐車場に戻って、車に乗りこむ。
なんだかんだこの車にも、もう少し乗ってやりたい。
まあ、恵利を説得するのに時間がかかりそうなので、意図しなくてもそうなるだろう。
腕に軽く手が置かれて、隣を見る。
もらえるのがわかっているような顔で、こちらを見あげる恵利に、顔を寄せた。
触れるだけの口づけは、思いもしないほど、多くを伝える。
愛おしい、と。
伝わるように、願うと。
知ってます、と。
そう、返ってきた気がした。
Fin.
――Thank you!

