オフィス・ラブ #0
寮から会社までは、地下鉄で20分ほどの距離だ。
寮といっても、マンションの数フロアを会社が借りあげているうちの一室で。
築の浅いその部屋は、寝るためだけに帰るには過ぎた環境だった。
勤め先である広告代理店の、巨大なビルのエントランスをくぐる。
冷房の効いた屋内に入り、生き返る思いがする。
ノータイでの勤務が許可されている部署でよかった、と改めて思った。
営業局に移って、丸2年が過ぎていた。
部署では6月の新人配属を機に、体制変更が行われ、新庄はそれまでいたメディアチームを抜けて、製品チームへと組みこまれたばかりだった。
今日は、一旦デスクに寄ったら、マーケやコンテンツ部門と合流してクライアントの会社へと向かう予定だ。
年末の新商品に向けたプロモーションが本格始動しはじめている。
仕事をしている時が、一番自由かもしれない。
そう感じる時がある。
何にもとらわれることなく、学んで、考えて、表現し、議論し、行動し。
空っぽになるまで燃焼して、それでもすぐに、新しい障害が来る。
それは一種のゲームのようなもので、攻略に頭を悩ませることもあれば、思わぬきっかけで解決することもあり。
思うようにいかないこともあれば、震えるほどの感動を味わうこともある。
中毒とまで言われると否定したくなるが、それに似た魅力を、確かに感じていた。