オフィス・ラブ #0
冷たいコーヒーを買ってからデスクに行こうと、オフィスに入る前に、給湯室へ向かう。
小さな部屋の手前には、自動販売機が数台並んでいる。
先客がいた。
新庄のいる第6部に、ひとりだけ配属されたばかりの新人だ。
販売機の前で、じっと考えこんでいる。
足音に気づいたのか、こちらを見ると、おはようございます、と落ち着いた声で挨拶してきた。
「おはよう」
こちらも返すと、どうぞ、と順番をゆずってくれるので、遠慮なく硬貨を入れてボタンを押す。
カラカラと音を立てて氷がカップに落ちるのを見ながら、特に深い意図もなく声をかけた。
「もう、慣れた?」
新人は、考えるように首をかしげると。
「どうでしょう」
と気負いなく言った。
へえ、と心の中で感心する。
この季節、仕事で出会う新人は、誰も彼もが力の入りすぎで、まるで社会に出たら「はい」か「いいえ」でしか答えちゃダメだと教わってきたかのように、堅い受け答えばかり。
そんな中、彼女の返答は新鮮だった。
大塚、といったか。
まだ学生っぽさは抜けきらないけれど、はしゃいだ雰囲気のない、すらりとして身ぎれいな女子だ。
ちゃんと育てば、いい営業になるかもしれない。
新庄はできあがったコーヒーをとって、じゃあ、とその場を去った。