『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
言われてみたらそうだ。
彼女の足元は黒のジャージ姿で、履いてる靴はスニーカーだった。


快活そうに笑っている顔は、さっきの振り袖姿なんかよりも余程キレイな人に思えた。


「美人ですよ…」


体系的に締まらない自分とは不釣り合いな気がしたけれど、仁科というおばさんは不満そうにこぼした。


「顔はまあ整ってる方だと思うのですが、性格が定まらなくて。…自分に正直と言いますか、周りを気にしない…と言うか。下手するとお見合いの席で、いきなりチューもあり得そうな娘なんです…」


「チュー⁉︎ まさか…」


呆れて笑うと、仁科さんは真剣な顔で「それくらい要注意人物なんです!」と断った。


見合いを勧めに来たんだよな…と思いながら、もう一度写真を手に取る。


縦長でドーム型をした二重瞼の眼が、三日月形のように細くなってる。
話しかけてる最中で撮られたような逆三角形の口からは、今にも声が聞こえてきそうだ。

何よりその体つき。

自分の肉を分けてやろうか…と言いたくなるほど細い。

抱きしめたら、どれだけ細いか分かるだろう…。




(……会ってみようか…)


日本へ帰って、初めてそんな気になった。
砕けた性格の人なら、見合いの席で何があっても言い逃れできると思った。


(どさくさ紛れに抱きついて、どれだけ細いか確かめてやろう…)



悪い考えで見合いを決めた。

その見合いの席で、いきなり抱きついてこられたのは予想外だった。




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