『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「す…すす…すみませーん!」


真っ赤な顔して叫んで逃げた。
ぽかん…とする婦人二人の前で、俺は大いにウケてしまった。


「す…すみません、久城様、不躾な娘で……」


平謝りする仁科さんに、「とんでもない!」と声を上げた。


「あんな面白い人に出会ったのは初めてです!できれば二人きりにさせて欲しい。どんな人か、じっくり品定めさせて下さい!」


婦人二人は手を取って喜んだ。
そこへ戻ってきた人は、先程とは打って変わって淑やかだった。



「さ、先程はどうも…失礼致しました……」


どちらが本当の彼女なんだろうか…と疑った。
あれこれと言い訳するのを聞いてると、どうも最初の行動が本来らしい。



「もう一度ぎゅーしますか?」


乗るワケないか…と思いながら提案した。
目をきらきらとさせた彼女が、「いいんですか!?」…と身を乗り出してきたのは意外だった。


了解をもらって抱いた体は、想像とは違った。
思っていたよりも肉が厚くて筋肉質な感じだった。

ウエスト回りは確かに細そうだけれど、二の腕や肩の付近は妙なまでに逞しい。



(一体何の仕事をしてるんだ…?)


疑問に思った瞬間、囁かれたプロポーズ。
多少面食らって、聞こえなかったふうを装った。

相手の正体も自分自身の正体も早々と打ち明け合いたくない一心で、わざとその後も触れずにいた。


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