『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
パタン…と玄関ドアが閉まる音が聞こえた。
和室に入り、1時間くらいが過ぎた頃だと思う。


久城さんが出て行ったのか、お嬢様が出て行ったのかは分からなかった。
私は隣に寝ている人の顔を、じっと眺めていたから。


スースー…と、おばあちゃんは寝息を立てて眠っていた。



…一週間もの間、二人きりはさすがに辛かった。

特におばあちゃんのお飯事に付き合うのは、かなりの苦痛を感じた。


日中、夜間を問わない食事作りには参る。
作った物を粗末にも出来ない。


「食欲無いから少しだけ後にしませんか?」
「支度はもう少し先になってからやりましょう」
「外へ散歩に行ってからにしません?」
「…そうだ!あやとり教えて下さい!」


あれこれと言い訳を考えるのは疲れる。
10回うちの半分程度は、何とかそれでごまかせる。
でも、根本的には上手くいかない。


食事を作ることは、おばあちゃんにとってステータスの一つ。
子守唄を歌うのと同じくらい、大事な生活習慣だから……。


ごそり…と打つ寝返りに怯える。

昨夜からずっと、おばあちゃんは不眠だった。
短いうたた寝を繰り返しながらの2日間、本当に疲れきった。


高齢者の睡眠が崩れ易いのは知ってる。
便秘や運動不足、水分不足も原因になってる。

それらが原因だってことは、施設にいる時に学んだ。
難しい講義の研修に何度も行かされて、どうしたらいいかも実践してきた。

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