『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「今日からまたお願いしますっ!」


係長と握手して、他の職員からも歓迎された。




「おや、甲本さん…!」


利用者からも顔を覚えられてる。
ここはやっぱりあたしの居場所だったんだ…。


「こんにちは……『ただいま』かな…」


戯けて笑って見せた。
利用者の間からホッと笑みがこぼれる。

……その瞬間に思う。



ーーやはり、あの高級マンションでの日々が間違いだったんだ。


あたしとは世界が違い過ぎてた場所。


(…ここが一番のお似合い。あたしの居場所は、やはり、ここしかないんだ………)





カタカタ…と夜中まで響くパソコンキーの音。
これまでのあたしは、それをすごく虚しく聞いてた。


でも、それは本当は幸せな時間だ…と思うようになった。

真剣に何かに打ち込める。
頭がクリアで、体力があって、一緒に働ける仲間がいて、信頼できる上司がいるーーー。

虚しくなることなんか何もない。

あたしは、自分が生きる場所を見失ってただけだ。きっとーーー。






「…精が出るな」


ギクリとする声に振り向いた。
介護休憩室のドアに凭れていたのは、医師の武内だった…。





「なっ……どうして此処に⁉︎ 」


二度と会わなくて済むと思ってた彼が、何故ここにいるのかが分からなかった。
この間訪ねた総合病院の内科で、医師として勤務していた筈なのにーー。


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