『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「出て。傷の手当てをしないと…」


彼の言葉にふるふる…と頭を横に振った。
無意識のうちに、あたしは彼の住むマンションまで運転してた。

カークロックは夜中の0時を回ってる。
彼でなくても、人の家に上がり込むような時間ではない。


「…ホントに大丈夫です。少し切れただけだと思いますから。平気で……」


ーーー思わず言葉を呑み込んでしまった。

久城さんは、怖いくらい鋭い眼差しであたしのことを睨んでた。

そんな顔をされる覚えのないあたしは、ぐっと息を呑み込んだーー。



「…早く出て。車は地下の駐車場に入れておいてもらう」


低めの声に圧倒される。
仕方なくドアを開けてみると、人の良さそうな顔をした中年男性が一緒に立っていた。


「…俺の運転手の中田。仁科さんとは同級生だよ」



「…どうも初めまして。甲本様…」


きちんとスーツを着た男性が深々と頭を下げてくる。
あたしはそれに応えるように、軽くお辞儀を返した。


「は、初めまして……あの……叔母の同級生って…どういう……」


(それって…今、関係あるの…?)


戸惑いながら彼と中田さんの顔を見比べた。
剛さんは何も言わず、スッとあたしの手を取った。


「…行こう、とにかく傷を見ないと…」


車外に連れ出し背中を押す。
そのままの格好で、マンションへと続く階段を上り始めた。


目の前にあるのは、煌びやかな玄関ホール。
ピカピカに磨き上げられた床は大理石調で、もしかしたら本物の大理石かもしれない。

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