『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
落ち着かないから車内も見回す。

内装は全て革張り。木目調のデザインが施されてる運転席側にはカーナビが装備されてるし、その他のスイッチ類も全てあたしの乗ってる国産の軽自動車とは違う。


はぁ…と小さな溜息が出てしまった。
さっきまで自分がしていた仕事は、こんな高級車に乗るような人達には理解されそうにない。

弱ってる人達を慰問することはあったとしても、直接関与する事なんてきっとあり得ないだろうから。


「…疲れてる?」


声をかけられて振り向いた。

さっきフロアで怒鳴った人と同じには思えないくらいどっしりとした構えでいる彼に向かって、あたしはううん…と首を横に振った。


「平気です。遅いのはいつものことだし、仕事で疲れるのは当然だから…」


神経は人一倍使う。
一見肉体労働だと思われがちな介護の仕事は、実は精神労働だと言われるくらいハードな仕事。


「大変な仕事みたいだね。俺は何も知らないけど、今日あそこへ行ってみて改めてそう思った。頭が下がるよ。君も、働く人達にも」


あの医者だけは別だけど…と付け足す。
その一言が可笑しくて、ついプッと吹きだしてしまった。


「…剛さん、あたしの仕事場、誰に聞いたんですか?どうしてあそこへ来たの?」


少しだけ気分が軽くなって聞いた。
彼はあたしに近寄ってきて、囁くように教えてくれた。


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