『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
ほぅ…と短い息を吐いた彼女の口から、スースーと寝息が聞こえ始めた。



「……眠ってしまわれたんですか?」


中田がちらりと横目にする。



「うん…。やっぱり疲れてるんだろうな…」


緊張しながら働いてるんだ。当然だろうと思う。




(でもなぁ…今寝なくても……)


膝枕状態で眠ってる彼女を眺め、ふぅ…と短い息を吐く。




「剛様でもそんな顔されるんですね…」


運転手の中田がくっ…と小さな笑い声を漏らした。
バックミラーで俺の顔を確認したらしい。
いやらしい奴だな…と思いつつ、「するさ…」と答えた。



そもそも彼女には、最初から翻弄され放しだった。

こっちが思うようには動かないところは、その辺のお嬢様よりも厄介かもしれない。


…それでも、一緒に居て安心するのは何故だろう。


誰かに似てる雰囲気のせいかな。


その誰かというのも、薄々感づいてる。


長年胸を痛めてきた現実を、この最近ずっと目の当たりにしてるから……。




「…どうしますか?やはり本宅へ向かいます?」


黙り込んでる俺に中田が問いかける。

広い庭の中に佇む住まいを思い出し、そうしてくれるよう頼んだ。



「初めてですよね。剛様が本宅に女性をお連れするのなんて」


余計な言葉を発する中田を軽く睨んで、ふっと笑った。



「彼女が特別だからだよ」


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