『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「はぁー…」


あたしよりも今頃はメグの方が、「はぁー」と深い溜息をついてるかもしれない。
忙しい育児や家事の合間を縫ってあたしの為に時間を費やしたのに…って、きっと思ってる筈。


でも…あの一瞬で、あたしは久城さんの全部が分かったような気がした。

あの人は絶対に、あたしにとっては運命の人だと思う。

彼以外の人に抱かれても、決してあんな安心感は得られない気がする。


…誰よりも心が一番通った。
だから、あんな言葉を言ってしまった。



『……あたしと……結婚して下さい……』


先走りし過ぎたなぁ…と反省はしている。

だけど……



「最後までスルーされたままだったなぁ……」


プロポーズなんて、女のあたしから言うべきじゃなかった。
そういうのはやはり、男性の側からされた方が嬉しいに決まってる。

ハグよりも何よりも、そこだけは間違ったと思う。

断られる理由があるとするなら、きっとそれだけだ……。



「しまった…もう少し自重しとけば良かった……」


後悔先に立たず。
またしてもお年寄り達の言う通り。


はぁ〜…と更なる溜息をついて、思い出すのはあの深い胸の中ーー


ふんわりと包まれて幸せだった。
あのあったかさに、ずっと包まれていたい…と思った。


(もう一度、会いたいなぁ……)


カラオケなんて実際はどうでもいい。
あたしはただ、彼の腕の中で、もう一度ゆっくり呼吸したいだけ。


生きてる…って実感を味わいたい。
愛されてる…って気持ちを感じたい。


ただ、それだけなんだ……。




< 31 / 249 >

この作品をシェア

pagetop