『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
加えて言うなら、どこの部屋もきれいに掃除してあってピカピカだった。
独り暮らしでどうやってここまで綺麗にできてるのか、さっぱり分からないくらいだった。



「あ、あの……お掃除、趣味でしたか?」


(確かカラオケだったよね…)と、思い出しながら聞いた質問に、思わず爆笑されてしまった。

「どうして?」と聞き返す彼に、「部屋が美し過ぎるから…」と答えた。


「週一でハウスキーピングを頼んでたんだよ。でも、これからはもう頼まない。愛理さんがしてくれるだろ?」


広くて大変だけど、よろしくね…と言われた。
目の細くなる顔に「はい!」と返事をしてリビングの窓へと近づいた。



「うわぁ…いい眺め…」


オモチャ箱みたいに広がった眼下の景色に見入った。
まるで、お城に住むお姫様にでもなった様な気分に襲われる。
そんなあたしの横に立つのは、王様みたいに大きな体をしている人。


「今日からここで暮らすんだよ。高い所は平気?」


優しい声を発する彼を見つめ、「うん…」と小さく頷いた。

メグから言わせると、久城さんは相当怪しい人らしいけど、あたしはもう、そんなのどうでもいいと思ってた。


(この人と一緒に暮らせるだけでいい。今日からはもう、職場のことも気にせずに済む…)




休職扱いにされていた職場の同僚から、この最近、復帰しておいで…と何度もメールやLINEが入ってた。

あたしの代わりにケアマネ業務行ってた係長が、体調不良を理由に休みだしたからだ。


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