嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「これでええ?」
わたしの方に頭を下げた。
柔らかそうな少し色素の薄い髪。
シャンプーの香りだろうか、鼻先をすっきりとした匂いが掠める。
「子供みたいやわ」
目に付いた水滴をポンポンとタオルに染み込ませた。
「サンキュ」
顔を上げた池上くんと思いのほか近くで目が合う。
ああ、睫毛の上にも水滴が・・・・・と思ったところで思考が中断された。
ほんの数秒、唇にそっと押し付けられた温もり。
一旦離れて、もう一度。
自然に目が閉じる。
きっとそれも時間にすれば僅かなもの。
なのに永遠に続くのではないかと思うような一瞬。
池上くんが離れていく気配を感じて、そっと目を開けた。
「・・・・・・・・・・大原」
何か言おうとする池上くんのその先の言葉を、電子音が邪魔をした。
ブレザーのポケットから携帯を出して、わたしに背を向けて話し出す。
耳の先が赤く見えるのはわたしの気のせいだろうか・・・・・?