嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
後ろから急に声をかけられて身体がびくんっと跳ねた。
「主任・・・・・」
「優しいね。言えば迎えに来てくれるの?」
「心配症で・・・・・」
「愛されてるね」
切れ長の目が綺麗な弓型になる。
10年前、この目が好きだったな・・・・・。
「愛されて・・・・・なんや恥ずかし」
あれ・・・・・?
電話の相手を池上くんは分かってるのかな・・・・・?
「主任、すっかり大阪本社に慣れはったみたいですね」
「そうだね、みんないい人だしやりやすい」
「モテモテやし。他の課の女の子たちも仕事にかこつけて見に来てるんですよ」
「ははっ、それじゃモテてるんじゃなくてパンダみたいだ」
「気さくな人やから話しかけても大丈夫
って言うときます」
「仕事に支障が出るのは困るけどな。まあ、程々に」
そう言うと池上くんが長い人差し指と中指を揃えてわたしの額を突いた。
何故だか胸が苦しくなる。