嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「じゃ、一口だけ・・・・・」

猪口を手渡されるときに、キュッと手を握られた。これがセクハラというものか・・・・・。

神林くん、貸し一つね。

注がれる透明な液体を見つめ、一杯になったところで意を決して口をつける。

瞳の端に池上くんの心配そうな顔がうつりこんだ。

社会人してればこんなことくらいあるよね・・・・・。

飲み干してハンカチで口許を覆い、ふうっと息をつく。

「すみません、一杯だけのお付き合いで」

「いやいや、良い呑みっぷりだったね」

浜中部長が満足そうに頷いた。

良かった。
場の雰囲気を壊さなくて。

これで契約が上手くいけばいいんだけど・・・・・。

ご機嫌な相手の話しに適当に相槌をうちながら、時間が過ぎるのをひたすら待った。


「今日はありがとうございました。これからもよろしくお願いします」

主任以外はこれから祇園のクラブに移動するらしいので、お見送りをする。
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