嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


池上くんが優し過ぎて痛い。

さっきまで縋っていた胸の温もりが離れてしまって寂しい。

「千雪!」

ベッドの周りに引かれたカーテンが乱暴に開かれた。

「健太郎さん・・・・・」

頭を撫でていた手が離れる。

「アルコールは口にするなとあれほど言っておいただろうが!」

腰に手を当て、見下ろす健太郎さんはいつもの3割増で怖い。

普段は優しくてわたしに甘いけれど、不注意で体調を崩すとこてんぱんに怒られる。

「ご主人ですか?」

わたしたちの間を割って入るように池上くんが口を開いた。

「はあぁっっ!?」

「申し訳ありません、彼女の上司の池上といいます」

そう言って深々と腰を折った。

「・・・・・いえ、僕は千雪の兄です」

健太郎さんが訝しげに返した。

「兄・・・・・?」

「あっあの、10年前に母が再婚してできた義理の兄です」

「ああ・・・・・」

「斉川さんには千雪がアルコールがダメなこと口が酸っぱくなるほど言っておいたのに」
< 57 / 153 >

この作品をシェア

pagetop