嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
池上くんが優し過ぎて痛い。
さっきまで縋っていた胸の温もりが離れてしまって寂しい。
「千雪!」
ベッドの周りに引かれたカーテンが乱暴に開かれた。
「健太郎さん・・・・・」
頭を撫でていた手が離れる。
「アルコールは口にするなとあれほど言っておいただろうが!」
腰に手を当て、見下ろす健太郎さんはいつもの3割増で怖い。
普段は優しくてわたしに甘いけれど、不注意で体調を崩すとこてんぱんに怒られる。
「ご主人ですか?」
わたしたちの間を割って入るように池上くんが口を開いた。
「はあぁっっ!?」
「申し訳ありません、彼女の上司の池上といいます」
そう言って深々と腰を折った。
「・・・・・いえ、僕は千雪の兄です」
健太郎さんが訝しげに返した。
「兄・・・・・?」
「あっあの、10年前に母が再婚してできた義理の兄です」
「ああ・・・・・」
「斉川さんには千雪がアルコールがダメなこと口が酸っぱくなるほど言っておいたのに」