嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
傍らに立っていた池上くんが口を開く。
途端に斯波先生の纏う空気が剣呑になった。
「こちらは?」
看護師さんに点滴の用意を指示してから斯波先生が聞く。
「成海の上司で池上といいます」
「今日は斉川さんは一緒じゃないんですか?」
「斉川は今日は都合が悪くて・・・・・」
「斯波せん・・・・・せ、わたしが勝手に呑んでしまったの。主任・・・・・は悪くない・・・・・」
斯波先生が唇の端をちょっと上げた。
「ま、とりあえずあっちのベッドで点滴だ。その前に吸入か」
ポトリポトリと点滴が身体に入ると呼吸がラクになっていくような気がする。
ベッドの側の椅子には腕組みをした池上くん。
「主任・・・・・もう大丈夫ですから、帰らないと終電が・・・・・」
「帰れる訳ないだろ。ちゃんと元気になるまで見届ける。オレのことは気にしなくていいからちょっと寝ろ」
そう言うと前髪を上げるように額に手を置いた。
少し怒ったような口調なのに、額に置かれた手が滑り、労るように頭を撫でる。