嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
この関係をなんと呼べばいいですか?


朝起きると、リビングのソファーにブランケットにくるまっている池上くんがいた。

少し近寄ると気持ち良さそうな寝息が聞こえる。

ソファーの下には池上くんの手からこぼれ落ちた文庫本。

高校生の頃、池上くんに勧めた推理小説の続編で、10年の間にシリーズ化されたものだ。

覚えてくれていたのだろうか。
なんとなく嬉しい。


起こさないようにキッチンに行き、朝御飯の支度を始める。

一緒に夜を過ごした恋人のために料理をしているような錯覚をしそうになる自分を思わず叱った。

池上くんはただの上司。

しかも会長の孫で、将来は決して小さくはないうちの会社の中枢にいるだろう人。結婚相手は言うまでもなく付き合う人だってそれなりのお家のお嬢様が相応しい。

高校の同級生だったことも2人の間で話題にならないということは、それほどの思い入れもなかったってこと。

「痛っ・・・・・」

ぼんやりして茄子のヘタで指を刺した。
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