嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


埋もれていた想いは埋もれたまま、掘り起こさず今までと同じように毎日を過ごせばいい。

そう決心した。


なのに・・・・・。


朝御飯の途中で池上くんから聞いた言葉に箸が止まる。

呼吸も止まる。


「オレ、時々ここに来て本を読ませてもらってもいい?土曜日とか」

「読みたい本があったら持って帰って貰っても構わないですよ・・・・・?」

「いや、ここ居心地が良くて。読みたい本もいっぱいあるし。来る時は昼飯と晩飯奢る」

「・・・・・土日は溜まった家事とかしてて隣でバタバタするけど・・・・・?」

「いいよ、気にならないから。大体成海の家だし」


断らないと。

断るべきだ。



頭ではそう警告を出すのに、口から出たのは全く違う言葉。


「お構いはあんまりできないかもしれな
いですよ・・・・?」

「いらないよ、そんなもの」

あでやかに、池上くんが笑う。

月日を重ねて大人になった今も笑顔はあの頃と変わらない。
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