この度、友情結婚いたしました。
懐かしい琢磨のぬくもりは、別れて十年以上経っても身体は覚えていて、甘い彼の体温にクラクラしてしまう。

「たっ……琢、磨?」

頭の中まで甘く痺れてしまいそうになりながらも、どうにか声を絞り出す。


「普通はここで泣くもんじゃねぇの?……夫が浮気しているところ見たんだから」


琢磨……。


やだな、自分だって昔浮気したくせに、どうして優しいところは変わっていないのかな?


「せめてもの罪滅ぼしだと思って、抱きしめられとけ」

「……なにそれ」


思わず噴き出してしまうと、琢磨は私を抱きしめる腕の力を強めた。


「言っただろ?後悔しているって。……泣きたい時は、素直に泣け。でないといつまで経っても泣けないから」


なんだろう。……琢磨が言うほど、私はショックを受けてないし悲しくなんてない。
でもそう言われちゃうと、涙腺が緩んでしまう。


琢磨が昔と変わらず優しいから?春樹が宣言通り浮気していたから?……それとも昔、私の知らないところで、春樹が琢磨に怒ってくれたから?


色々な思いがどっと押し寄せ、琢磨の言う通りまんまと私は彼の腕の中でわんわん泣いてしまった。


そんな私に琢磨はなにも話すことなく、ずっと背中や髪を撫で続けてくれていた。
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