Repair of the world~フルート吹きの魔法使い2~


「―――出来たぞ!!!」


太陽が傾きかけた頃、ちょうど外で火を炊き夕飯の準備をしている時だった。

カズマが篭っていたテントのドアが勢いよく開けられ、本を抱えたカズマがそう叫びながら飛び出してくる。
ほとんど寝ていないのか目の下には隈が出来ていたが、とてもやりきった表情を浮かべていた。


「待たせてしまって申し訳なかった。出来上がりはこれだ」

そう言って私に楽譜を見せる。
譜面は至ってシンプルで、前のような奇怪な音の羅列ではなかった。

綺麗に並べられた音符。
見ただけでも美しいメロディーであることが分かる。


「見た通りそんなには難しくはない。けれど、一音一音に『平和』を願う想いが込められている。その音符を吹いた時にきっと、いや必ず世界は救われるだろう。・・・いいか?この曲を吹く時は、心の底から願うんだ、この世界を救う、平和にする、と。そうすればその想いは必ず魔法となって現れる」

カズマさんはそう話すと、リリュアさんにもその楽譜を見せた。
リリュアさんはその楽譜を一通り見た後、軽く頷く。

「リリュアには楽譜の読み方を教えていて、見ただけで歌えるんだ。リオン、フルートを貸してくれるか?今からこの曲をお前の前で披露する。今は平和だから、この曲は発動する事はないとは思うが、君の心の中に何か生まれるはず・・・。その想いを大事にして、そして未来の世界を救うんだ」


私がフルートをカズマさんに渡すと、カズマさんはフルートを構えリリュアさんに目配せする。

リリュアさんはそれに笑顔で応えると、目を閉じ意識を集中させた。

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