雨の繁華街

そう小さくほほえむように笑い何故か瞳に涙が溜まりだす彼女を見て、衝動的に手首を思わず掴む。何故だかわからないけれど、心の奥底から何かが湧き出すような、溢れ出しそうな、そんなよく解らない感情が身体を巡って自分でも理解出来ない行動を取らせる。当然彼女は驚き目を丸くする。

「えっ、おにぃさん?」

「…と、とりあえずさ、こんなとこでずっといるのもあれだしさ。行くとこないんでしょ、おねぇさん。」

締まらなくてカッコ悪い。
こんな決まりの悪い台詞しか吐けない、そんなの自分でもわかっている。けれどこのせり上がる正体不明の感情を隠すのに精一杯だから、これはこれで精一杯カッコつけたつもりだ。
それに、きっとあのままだったら理由がわからないけれど涙を流してしまうだろう。俺は何故か彼女の涙を見たくはないし流してもほしくないと思ってしまったのだ。
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