冷たい舌
「ほんとにあるの? 惚れ薬って!?」

 詰め寄る忠尚に、慌てて手を振る。

「なな、ないよ、そんなもん」

「いいや、あんた今、あるって言った!」

「揚げ足取るなよ~」

「こういうの揚げ足って言うのかよ。どうして、今まで黙ってたんだよっ」

「なんで、いちいち、お前に報告せにゃならんのだ。

 第一、お前、ハーレム作れるくらいモテてるじゃないか。そんなもん何に」

 言いかけて、天満は、はた、と思い当たった。

「だっ、駄目だぞ。駄目。絶対、駄目っ。

 あれは二、三時間しかもたないんだ。

 薬が切れたあと、透子ちゃんになんて言い訳するつもりだ!?」

 だが、忠尚はわずかに射した希望の光に、天満の言葉など聞いてはいなかった。

「なんでもいいんだよ! 
 このままじゃ、透子を和尚にとられちまう!」

 悲壮な忠尚の言葉に押されたように、天満は黙り込む。

 作業台に縋って、探るように甥を見た。

「お前……、絶対、後悔するぞ」
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