冷たい舌
「一度、間近でお姿を拝見したかったんですが。残念です」

 思い切りよくそう言うと、義隆に丁重に礼を言って、車に向かおうとする。

 言葉も見つからないまま、引きとめるべく手を伸ばそうとしたそのとき、草履の下で、厭な振動が伝わってきた。

 まさか……。
 出ていくときは、うちのクラウンで行ったはずだが。

 義隆の背筋をガマの油より悪い汗が伝う。

 だが、その地揺れと爆音は、確かにあの魔王の到来を告げていた。
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