冷たい舌
 砂利を跳ね飛ばしながら、突っ込んできたのは押し潰したように車高の低い、真っ赤な車。

 夏の光を浴びて輝くその車は義隆たちの目の前を猛スピードで駆け抜ける。

 少し行ったところで、いきなりスピンしたのかと思ったら、そうではなく、大きくテールを振って、奇麗に駐車スペースに収まった。

 いわゆるドリフト駐車だが、もちろん、そんなことは義隆にはわからない。

 エンジン音が途切れると、閑寂な寺の駐車場には、ただカンカンという微かな金属音だけが残る。

 舞い上がった土埃の向こうの、その威圧的な車体を見て、春日は小さく呟いた。

「まさか……
 ランボルギーニ カウンタック?」

 それは、昔、一世を風靡したスーパーカーの中でも、魔王と呼ばれた車だった。

 そのとき、ドアが跳ね上がった。ガルウイング式になっているドアの片羽根と車体の細い隙間から、場違いに愛らしい掛け声とともに、長い脚が覗く。

「ごーめんなさいっ、おじ様っ。
 遅くなっちゃって」

 現れ様、可愛らしく顔の前で手を合わせたのは、真っ白なワンピースを着た透子だった。

 幼さの残る小さな顔に、切れ長の目が印象的だ。

「透子ちゃん~っ!?」

 睨んだ義隆に、苦笑いして透子が後ずさったとき、反対側のドアが跳ね上がり、茶髪に近い頭の坊主が降りてきた。

「せっかく来てもらったのに、すみませんねー。
 透子は見合いなんかしないんだってさーっ」

 忠尚~っ!

 この馬鹿息子っ!
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