フキゲン課長の溺愛事情
 達樹は立ち上がってドアに向かった。そのまま出ようとして足を止め、璃子を振り返る。

「それに、俺はわりとこういうの、好きみたいだ」

 直後、ドアがパタンと閉じられた。こういうのってなんだろう、と思ったが、スマホの時刻表示を見て青ざめた。

「わわわわっ、大変っ!」

 立ち上がって、毛布をソファベッドの上に戻した。

 窓に目をやると、ピンク色のカーテンを通してほんのりと朝日が差し込んでいる。

(課長と一緒に住んでた人って誰だったんだろう……)

 カーテンの花柄の刺しゅうが、淡いピンクの光の中に浮いているように見えて、とてもきれいだ。

(女性だったのは間違いないよね。しかも、部屋は2LDKで、食器棚にはコーヒーカップもマグカップも、お皿もぜ~んぶふたつ揃ってるし……。やっぱり私たちと一緒で……結婚を前提に同棲してたのかなぁ……)

 気になってあれこれ考えそうになって、あわてて首を振った。昨晩、達樹に『互いに無干渉だ』と言われたばかりだ。

(詮索してうるさがられて追い出されても困るし。しばらくは大人しくしておこう)
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