フキゲン課長の溺愛事情
 なにをしたんですか、と訊きたい好奇心もあるが、達樹の顔はそんな疑問を受け付けないような厳しさを漂わせていた。まさしく〝不機嫌課長〟の顔だ。

 璃子がじっと見ているのに気づいて、達樹が視線を戻した。

「先に行け。遅刻するなよ」
「あ、は、はい」

 璃子は残っていたオムレツをあわてて頬張った。ショルダーバッグを取りに部屋に向かいながらも、達樹の言葉が気になっていた。

(『俺は泣かせた方だ』って……?)

 そのことは会社に向かう間中、ずっと気になっていた。



 とはいえ、いつまでもその疑問にとらわれている時間はない。その日出社すると、璃子は達樹とのインタビュー以外の記事をまとめて、璃子が担当する部分のドラフトを仕上げた。エコタウンプロジェクトの概要をまとめるのは沙織の仕事だ。それと併行して、璃子はその概要をもっと噛み砕いた内容にして、会社のホームページに掲載することになっている。でも、そのどちらも友紀奈の翻訳が終わらなければ取りかかれない。
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