フキゲン課長の溺愛事情
 足音も荒くバスルームに入った。達樹の部屋のバスルームは、2LDKの部屋だけあってファミリー向けの広いもので、啓一と暮らしていた部屋のバスルームとほとんど変わらない広さだ。

(まあね、広いからじゅうぶんふたりで入れるけど……。もし私が一緒に入りましょうって誘ったら、課長はうろたえるかな)

 もし本気にされたらどうしよう、などと想像してしまい、あわててシャワーを出した。

「わ、冷たっ」

 勢いよく水が出てきて、璃子は急いでシャワーヘッドの向きを変えたが、髪から冷たい滴がポタポタと落ちて背中を伝った。

(もう、課長が変なことを言うから!)

 我が家のようにさえ感じるようになっていたこの部屋の主が、実は上司で男性であることを改めて意識させられてしまった。

(でも、からかっておもしろがるくらいだから、やっぱり私は課長にとって『おもしろい同居人』なのよね……)

 達樹が『男でも女でも誰かがいてくれたらいい』と言っていたことを思い出す。

(だから、ルームシェアをする相手は私じゃなくてもいいんだ……)
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