フキゲン課長の溺愛事情
「今のマンション、俺名義で契約してるし……できるだけ早いうちに出て行ってくれるとありがたいんだけど……」
「あ……」

 そうか、そういうことになるのか。三年間の思い出が詰まったあの部屋から、早いうちに出て行けと。

「でも、そんなすぐに新しい部屋が見つかるかどうか……」

 璃子の言葉に、啓一が困ったように言う。

「俺はしばらく彼女の部屋に住まわせてもらおうと思う。でも、あっちはワンルームで狭いから……いずれ彼女に……俺の……その、俺名義の部屋に引っ越してきてもらおうかと」

(新しい彼女は、彼氏が元カノと住んでた家に住むのは平気なんだ)

 いったいどんな子なんだろう。気持ちの整理をつけたいのと好奇心を抑えられないのとで、璃子は啓一に問う。

「その彼女って……誰?」

 啓一がビクッと肩を震わせた。

「今はまだ言えない」
「そう……」

(そんなにその彼女のことを私に知られたくないんだ。私のこと、そんなに性格悪いって思ってるの?)

 五年も付き合ったのに。その思いがただただ璃子の目頭を熱くする。
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