ラブリー・トライアングル
「ばかだなあ、ミカは」


圭がくくくっと喉を鳴らした。


「―――大好きだよ、ミカ」


優しい声が私の耳許に囁きかける。

私はうっとりとして、


「私も大好き」


と答えた。


圭が目を細めて微笑む。


それから、ゆっくりと顔を近づけてきて、優しいキスをくれた。

私もお返しにキスを贈る。


あ、なんだかいい雰囲気………。

と思ったその瞬間。



「みゃああ~」


バラの花が舞い踊りそうな甘い空気を突き破る、無粋な声。


ユキがいきなり大声で鳴いたのだ。


私と圭は動きを止め、ユキを見る。

ユキがもう一度「うみゃあ~」とうなった。


「………もう! ユキ、またラブラブタイムの邪魔して!」


私は絶望的な気分で嘆いた。

圭が弾けたように笑い声をあげる。


「そうか、ユキのご飯がまだだったね」


ユキが『そうよ、そうよ。忘れるなんてひどいわ』と言うように鼻を鳴らし、圭の袖に爪をかけた。


私と圭は仲良く手をつないだままキッチンに行き、猫缶をあけてお皿に盛りつける。

目の前の床に置いてやると、ユキは満足げに「みゃああ」と鳴いて、優雅に食べはじめた。


「かわいいなあ………」

「かわいいねえ………」


私と圭はユキの前にしゃがみこみ、おいしそうに猫缶を食べる姿を眺める。



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