あの頃の私は知らない。

世界はまた輝きを増す

「なあ、お前らって付き合ってんの？」



そんな声が教室に響いたのは、私が園田くんに楽譜を貸しているときだった。

あのセッションをした日以来、園田くんはますますやる気が出たみたいで、私も自分の家にあった楽譜や教則本を貸していた。

いつしか教室の中でもそのやり取りをするようになっていて、話す回数は急激に増えていた。


だからだろうか。からかうように言った男子に対して、私もそれ気になってた、と周りの女子が言った。


「なんかたまに朝二人でいたりするし、最近仲良いよね」

「まじか！　なんだよ、教室でいちゃついてんなよ」


ど、ど、どうしよう。

からかわれた経験が少なすぎて、どう対応したらいいのか分からない。

周りも何だ何だと野次馬のようにこちらを見ている。

どうしよう、どうしよう、と心臓がばくばくと音を立てていた。


「あー、ごめんごめん。羨ましいだろー、お前宇佐美のこと好きだもんな」


そう言って笑いながら、からかった男子のほうへ向かう園田くんを、ぎょっとして見た。

ぎょっとしたのは男子も同じだったらしく、そんなわけないし、と言う声が響く。


えっと、え？　いやいやいや、ちょっと待って頭が混乱して追いつかない。