まるでペットのような彼
そんなある日の休日。

「郁美?」

「なあに?」

「医者、行ったのか?」

「あ!行った。6週目だって言われたよ。」

「そっか。」

「予定日は、12月はじめだね。」

「ん…で、郁美?」

「はぁい?」

「貧血があるんだから、これからは、一緒に風呂に入ろうな。」

「ふぇっ?い…いい…大丈夫…」

赤い顔をして、慌てまくってる郁美だが、そんな姿もかわいい。

「大丈夫なわけないだろ?貧血って馬鹿にできないんだぞ?なにかあったら、郁美だけじゃなく、お腹の子どもにもよくない。心配だから、一緒に入ること。」
我ながら、よい理由だ。

郁美は、恥ずかしがってなんだか呟いているが、俺の心配してるという言葉に観念したようで渋々了承した。


「じゃ、郁美。これから風呂入ろうか?」

「ふへっ?な…なに…な…いって…」

「なにって、風呂だよ。」

「だ…だって…そと…」

「外がどうしたの?」

「あ…あかる…い…」

まったくいつまでも、こんな反応で、ホントに30歳を過ぎてるのかと思ってしまう。


高校生でもこんな反応って珍しいんじゃないか?


明るいのを嫌がる郁美を連れて風呂場へ連れて行った。

「あ…の…はる…か…?」

「恥ずかしがっても、ダメ。明るくないと見えないでしょう?」

「えっ!ち…ちょ…」

「またない。」

いつもの言葉で郁美をおとなしくする。

俺が"またない"と言うと、もう止まらないことを承知してるようだ。


何ヵ月ぶりかになる一緒の風呂は、興奮するけど、お腹の子どものために抑えないとな…






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