まるでペットのような彼
「…神田さんが選んだのは、奥さんなんだから、大事にしてください。」

「…郁美」
私の名前を呼びながら、肩に手を回してきた。
抜け出ようとしても、ガッチリと掴まれて、簡単に外せそうにない…
背筋に嫌な汗が流れる。

「や…」

つぎに首筋に唇を這わせられる。
「……っ」

「昔からここが弱いよな…」
気持ち悪い。

ぞわぞわする。

どうしよう。ついてきちゃったのが間違いだった。


そんなとき、店内に人が入ってきた。


その入ってきた人の方へ目を向けたら、悠がマユさんと一緒だった。
見られたくないし、見たくないそんな状況だった。




言葉が出なかったのをやっと絞りだし「やめてください。」と言ったら「ホントは、うれしいくせに。」なんて聞く耳をもってくれない。

なんとか悠と顔を合わせないで、店を出たいと思いながら、身を捩って抵抗してたら後ろから声が掛かった。

「おじさん。嫌がる女性に無理やりってどうかと思うよ。」
その声で一瞬手が緩んだ隙に、声の主に抱き止せられる。

「なにしてんだ。このガキが…」
神田さんが、怒ったように言った。

「だから…スマートじゃないよ。おじさん。」

「俺の女なんだから、好きにしてんだ。若造が口出すな。」

声の主の悠が私の顔を覗き込み微笑んだ。
私は、悠にしがみ付いてしまっていた。

「おじさん。嘘ついちゃいけないよ。この人の彼氏は、おじさんじゃないから…ね!」
悠が私に向けて聞いてくれたから、コクコクと首を縦に振る。


「な…なに言ってるんだ。」
図星を突かれて焦っている。


「ほら、おじさんが彼氏じゃないってお姉さんが頷いてるじゃん。お姉さん、帰ったほいがよいよ。」

「なにを、勝手な…」

「よい大人が無理やりって、みっともないし、逆上するのもどうかと思うね。
俺も、気分悪いから帰るわ。」
その言葉に後ろにいたマユさんが…

「えっ!帰るって、きたばかりだし、そんなオバサン、ほっとけばよかったのに~クリスマスがダメだからって、今日の店外デートだったんじゃん。」

「マユ悪い」

「彼女に冷たい彼氏だな~」

「おじさん。勘違いしないでよ。彼女じゃないから…」

「おや、彼女以外とデートするんだね。」
この神田さんの言葉が、ちょっと胸に刺さる。

「無理やりなおじさんに言われたくないね。」


そう言って悠は、私を連れて店を出てしまった。

後ろからマユさんのなにか言ってるのが聞こえる。






< 60 / 137 >

この作品をシェア

pagetop