無愛想で糖度高めなカレの愛
眼鏡の奥の瞳を見張って私を見る夕浬くんと、時間が止まったように見つめ合う。

ドキドキと心地良い心音を感じていた、その時。


「これ食べたーい!」


私の左側から、女性の声が響いた。

反射的にそちらを見やると、まだ開いていたガラス張りのケーキ屋を眺めて話しながら、ふたりの女性が通りすぎていく。

彼女達につられて私もケーキ屋を見ると、ゴージャスで美味しそうなクリスマスケーキのポスターがボードに貼ってあった。けれど。

なんか、今のちょっぴり緊張感ある雰囲気を中断しちゃったら、微妙な気恥ずかしさが……。


「あ、あのガトーショコラ美味しそうだね! でもやっぱりチョコ以外のケーキも──」


照れ隠しで話を逸らしてしまった瞬間、横からふわりと抱きすくめられた。

驚く間もなく、彼の甘い声が私の鼓膜を揺する。


「どういう意味か、ちゃんと教えて?」


じわりと顔に熱が集まる。

どうしよう。今告白したら、このままキスしたくなりそうな状況じゃないコレ……。

よこしまな思いに一瞬悩まされた私が出した答えは、かなり大胆なもの。


「……続きは、あなたの部屋でもいい?」


口にしてからものすごく恥ずかしくなったけれど。

妖艶な笑みを浮かべ、「もちろん」と言う彼を見たら、羞恥心はさらに煽られるのだった。


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