無愛想で糖度高めなカレの愛
それからも少し話をして、六時半を回ろうかという頃、恵次が先に腰を上げた。


「本当にありがとな。さっそく課長に提案してみるよ。これ借りていいか?」


ポップを手にして彼が聞き、私も立ち上がって頷く。


「うん、もちろん。よかったかな、こんな案しか出せなかったけど」

「十分だよ。やっぱりお前に相談して正解だった」


そう言って、恵次は大きな手を私の頭にぽんっと置いた。

突然のボディタッチに驚いて肩をすくめるけれど、不思議とそれに下心があるようには感じず、嬉しさと軽い満足感だけに包まれた。

今日の提案がいい結果に繋がるといいなと願っていると、立ち去ろうとした恵次が動きを止め、口を開く。


「この礼は必ずする。……いや、させてくれ」


まっすぐ私の目を見て、いつもの軽い調子ではなく、真剣に力強く言われた。

ドキリと心臓が動く。

一瞬言葉が喉に詰まってしまい、その間に恵次は営業課のオフィスの方へと去っていってしまった。


“お礼なんていいから”って、言いそびれちゃったな……。私は仕事のためにしただけなんだから、そんなことしなくていいのに。

少しだけ複雑な心境になっていると、営業課がある方とは逆方向から人影が現れる。

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