無愛想で糖度高めなカレの愛
「……篠沢さん、あのテンションの高さはまた何かいいことがあったのね」

「これくれた人と話が弾んだんじゃないですか? 営業のコ(おだて上手な若い男の子)って言ってるのが聞こえました、あたしには」


美結ちゃんが真剣な顔で言うから、私は思わず笑ってしまった。

彼女は手に持ったおせんべいと、壁に掛けられた時計を交互に見て言う。


「ちょうど小腹も空いたとこだし、ありがたいけど。先輩もお茶いれます?」

「あ、うん。もらおうかな」


私が頷くと、美結ちゃんは微笑んで席を立った。

時計の針は三時を指している。業務が忙しくない時は、こうやって小休憩することも珍しくない。

美結ちゃんはオフィスの隅に備え付けられた給茶器でお茶を汲み、その紙コップを二つ持って戻ってきた。

お礼を言って受け取ると、さっそくおせんべいの袋を開けながら何気なく問い掛ける。


「篠沢さんって何歳だっけ?」

「先月の誕生日で三十八になったんじゃなかったかなぁ」


美結ちゃんは、フレンチネイルが施された綺麗な指でおせんべいをつまみながら言った。

三十八歳、独身であの調子か……。余計なお世話だけど、軽く心配になっちゃうなぁ。

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