無愛想で糖度高めなカレの愛
あぁ、今ちょっぴりいい雰囲気だったのに……。

残念な気持ちを隠し切れないけれど、誕生日から続いていた気まずさはなくなったように思うし、不安も軽くなった。全部、夕浬くんのおかげだ。


「夕浬くん……ありがとう」


涙を拭ってはにかむと、彼も眼鏡を押し上げて微笑む。


「こちらこそ、ひざ掛け使ってくれてありがとうございます」


あっ、と目線を落としている間に、彼は一歩足を引く。私が言葉を発する前に、「じゃあ、失礼します」と、あっさり背中を向けて離れていってしまう。

でも、その一瞬の表情がなんだか名残惜しげに見えたのは、私の気のせい?

もどかしさを感じて、もう一度引き止めようと口を開きかけたものの、広報課に誰かがいると思うと、さっきのように声を張り上げることが躊躇われた。


そうこうしているうちに、夕浬くんの背中は廊下に消え、パタンとドアが閉まる。再び静まり返るオフィスの中、私はまだ迷っていた。

彼に打ち明けていないことはまだひとつある。今、それも言うべきなんじゃないの?

私の隠し事も悩みも、全部彼が共有してくれたら、完全に仲直りできる気がする。

瞬時にそう思った私は、弾かれたように立ち上がり、急いでドアの方に向かった。

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