無愛想で糖度高めなカレの愛
きっと、彼女に声を掛けられたんだよね。それで、駐車場まで一緒に行くだけだ。

それだけのことだとは思うけど、やっぱり好きな人が他の子とふたりきりでいるのを見るのは嫌。さっきの意気込みも、今のツーショットを目撃してしまったことで、急激に萎んでしまう。

……また日を改めて、ゆっくり話を聞いてもらおう。そう思いながら、とぼとぼと自分のデスクに戻った。


椅子に引っ掛けたひざ掛けを手に取り、今し方の夕浬くんの言葉や手の温もりを頭に蘇らせる。

本当にすごく気が楽になった。これでいいアイデアも浮かぶかもしれない。

でも、あまり気負い過ぎない方がいいかな……まだ企画会議までは時間があるのだし。


「今日のところは帰るか」


ぽつりと呟いて、私はパソコンの電源を落とすためマウスを動かす。その時、画面の隅に表示された日付を見て、ふいに思い出した。

自分のことでいっぱいいっぱいで、つい忘れてしまっていたけど、土曜日はバレンタインだ。

このイベントを利用しない手はない。夕浬くんにチョコレートを渡して話し合って、ちゃんと仲直りをしよう。


「……よしっ!」


仕事も恋愛も上向きにしてみせるぞ、と俄然気合いが入った私は、自然と背筋を伸ばしているのだった。




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