無愛想で糖度高めなカレの愛
「女性をターゲットにしたものというと、例えば?」


まず口を開いたのは、一番端の私の席から対角線上にある席に座る、研究室のおじさま室長だ。

穏和な表情でたずねる彼に笑みを見せた私は、腰を上げてアンケート結果をまとめた資料を皆に手渡す。


バレンタインは誰にあげる予定か、どんなチョコレートを買いたいか等、女性を対象に行ったアンケート。

これをまとめていて気付いたことを、皆の手に用紙が行き渡ったのを確認して話し出す。


「この結果を見ると、恋人や会社関係の異性以外にも買う人が多いことがわかります。その種類も、定番の生チョコやトリュフもいいけど、少し変わった味が食べたいっていう要望が多かったんです」


そこまで話すと、私の向かい側に座る、同じ開発課の後輩である深田 美結(フカダ ミユウ)ちゃんが、大きく頷きながら同調してくれる。


「ノーマル以外だと苺味が好きって答えた人が一番多いんだ。やっぱり女性って苺が好きですね~」


片手で頬杖をつき、微笑みながら用紙をペンの先でトントンと叩く美結ちゃん。

ふわふわの長い髪をハーフアップにした、誰が見ても可愛いと言うだろう顔立ちの彼女は、仕事上でもプライベートでも私を慕ってくれている、心強い味方だ。

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