無愛想で糖度高めなカレの愛
私も表情を明るくして、美結ちゃんの話をさらに広げる。


「そうなの! 苺だけじゃなくて、フランボワーズとかラムレーズンは絶対ウケると思うのよ」

「うんうん、オシャレだし!」

「でしょ? でも中にそういうフレーバーが入ってるのはありふれてるから、逆に外側を苺やフランボワーズのチョコでコーティングして、中からトロッとチョコレートソースが出てくるとか……」


鮮やかなピンク色のチョコレートを一口かじり、そこからフォンダンショコラのようにチョコレートが流れ出る。

頭の中でそれをイメージしながら目線を宙にさ迷わせると、あいづちを打っていた美結ちゃんも、目を輝かせてテーブルに身を乗り出す。


「あ~それ絶対いい! スイーツ的なチョコって魅力的だし、高級感もあるし、女性は間違いなく好きですよ」

「だよね!? もういっそのことスプーンですくって食べるチョコとか斬新でいいんじゃ──」


ゴホン、とわざとらしい咳ばらいが私の言葉を遮った。

はっとして隣を見やると、私達の上司であるお局様の篠沢(シノザワ)課長が笑っている。口元だけ。


いけないいけない、つい話が大それた方へ行っちゃった。

私達が考えなきゃいけないのは、工場で大量生産するチョコレート菓子であって、ショコラティエが手間隙かけて作るようなスイーツじゃないんだから。

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