無愛想で糖度高めなカレの愛
再び溢れてくるあの頃の記憶や感情を堪えるように、私は俯いて膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめていた。


「……間宮さん?」


ふいに、耳の近くで心地良さを感じる声が響き、ぱっと顔を上げた。

心配そうにする夕浬くんが顔を覗き込むようにしていて、私はなんとか笑顔を作ろうとする。


「あ……ごめん、何でもない……!」


どうしよう、絶対ぎこちない変な顔になってるよ……。

とりあえず気を落ち着かせるためにトイレにでも行こうと、腰を上げようとした瞬間、私の肩にそっと手が回された。


「えっ……河瀬くん?」


驚いてビクッと肩をすくめると、彼は私の耳元で囁く。


「喋らないで、俯いていて」


何がしたいのかわからないけれど、とりあえず言われた通りに黙って俯いた。

すると、室長が心配そうな声を掛けてくる。


「おや、間宮さん大丈夫かい?」

「ちょっと具合が悪いみたいなので席を外します。僕がついてるので、ご心配なく」


淡々と答える夕浬くん。もしかして、私の様子がおかしいことに気付いて……?


「立てますか?」


そう問い掛けられ、こくりと頷く。

室長が心配してくれる中、恵次や皆がこちらに注目する視線を感じつつ、私達はお座敷を離れた。

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