無愛想で糖度高めなカレの愛
○フォンダンショコラにされた夜


『明穂さんはここにいてください』と言った夕浬くんは、ひとりで皆のもとへ戻り、私達の荷物を持ってやってきた。

酔い潰れた私を介抱するという口実を使ったらしく、難無くふたりで抜け出すことに成功。

居酒屋を出てすぐに、“河瀬さんとふたりで抜け出すなんて、先輩やるぅ! ステキな夜を☆”という美結ちゃんからのメッセージが届いた。

そんなテンションではないんだけど、と思いつつ、とりあえずウサギが苦笑しているスタンプを送っておく。


スマホをコートのポケットにしまうと、夕浬くんと並んで明るいアーケードの中を歩く。ここを抜けて大通りに出たら、タクシーを拾うつもりだ。

吐く息で手を温めながら、夕浬くんにもう一度謝る。


「本当にごめんね。付き合わせちゃって」

「いや……俺も嫌だったから。手塚さんの前にあなたを戻すのが」


隣を見上げると、「ただの嫉妬ですよ」と言って彼が苦笑するから、ドキリと胸が鳴ってしまった。


「あなたを一度は自分のものにした男が目の前にいると思うと、憎らしいし、悔しかった」


前を見据えながら、若干声に不快さを露わにする彼だけれど、そんなふうに嫉妬してくれることを、どこか嬉しく思う自分がいた。

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