無愛想で糖度高めなカレの愛
「前、ウイスキーを見て『知り合いがよく飲んでた』って言ってたでしょう。たぶん男で、それも親しい人だろうなと思ってたんで」

「そ、その通りです」


さすがの洞察力。あの些細な一言からそこまで見抜いていたとは。

感心しつつも、すぐにまた私の表情は曇ってしまう。


「……今さらあんなこと言われても困るわ。私のこと後悔してるだなんて……ほんと勝手な人」


目の前にいる彼のスーツのスラックスに目線を落とし、重い口を動かして本音を漏らした。

冗談でも言ってほしくなかった。もう恋愛関係は綺麗さっぱり終わりにして、ただの同僚として接したかった。


「戻りたくないな……」


ため息とともにぽつりと独り言をこぼすと、黙って聞いていた夕浬くんは腕時計を見やる。


「帰りましょうか。もうすぐお開きになるだろうし。送りますよ」


送るという一言に、私は慌てて顔を上げた。


「え、や、そんな悪いよ!」

「ひとりで帰りたいんですか?」


無愛想のまま問い掛けられ、思わず口をつぐむ。なんだろう、この静かな威圧感は。

私の心の奥底にある、“ひとりは寂しい”という想いも見抜いているような言い方に、やっぱり素直にさせられてしまう。


「……一緒にいて」


彼を見上げて言うと、無の表情がほんの少し緩められた。




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