ぼくらのストロベリーフィールズ
4-1
☆
炊飯器からは、香りのよい蒸気が噴き出している。
尚紀くんは慣れた手つきでコロッケにパン粉をまぶし、沸騰した油の中にそっと入れた。
「ねーねー、にーちゃん、それ新しいカノジョ?」
私をじろじろと見つめてきたのは、1つ下の弟くんらしい。
日焼けした肌と、整られた短髪が特徴的な、尚紀くん似のイケメンだ。
「んー残念ながら違うんだよねー。でも可愛いでしょ?」
「ちょ、何言ってんの?」
尚紀くんの発言にテンパってしまう私。
「マジでずりー。俺の中学そんな可愛いオンナいねーし」
うむむ、この弟くん、ちょっとチャラい系ですかね?
初めて来た尚紀くんの家。
年季の入った一軒家には、保育園児から中学生までの男の子が詰め込まれていた。
コンロでは、油の泡にかたどられたコロッケが、揺れながら色を帯び始めていた。