ぼくらのストロベリーフィールズ




「今度、一吾くんの家にナズも遊びに行くことになったよー。超楽しみ~」



教室に入ると、ナズちゃんが長いまつ毛に囲まれた目を細め、笑っていた。


一気に私の心はぞわっとしてしまう。



とりあえず、「そうなんだー。良かったね!」と返しておいた。



やばいやばい!



これまでも不良系の友達とか女の先輩とか一吾くんの家に遊びに来てるけど。


ナズちゃん目ざといし、私の歯ブラシとか化粧水とか隠さなきゃ。



1人慌てている私に対し、ナズちゃんとクラスの友達は、


「ねー、一吾くんって一人暮らしなんでしょ? ナズちゃんそのまま住みついちゃえばー?」


「うおお。それ超やばいでしょ。同居とか憧れる~」


「でも不良のたまり場って噂じゃん? ちょっと怖くない?」


「ううん大丈夫! 実は一吾くんの友達と仲良くなって、ナズも今度連れてってもらうことになったって感じだし~」


などと、興奮した様子で騒いでいる。



私たちのグループはクラスの女子内で一番派手な位置づけだろう。


ぎゃははーと騒ぐ声が教室内に響き、

他の女子たちや男子たちが興味深そうに、またはウザそうに、私たちをチラ見する。



「のばらちゃんは行ったことあるの~? 一吾くんの家」



自分の席に戻ろうとしたとき、急にナズちゃんに顔をのぞきこまれた。



この前トイレで詰められたことを思い出し、

「うん、ちょっと顔出しにいっただけ。近所だし」と無難に答えておいた。



その時、ちょうど先生が教室に入ってきたため、ふーん、と彼女は言ったのち、自分の席に戻っていった。




< 109 / 315 >

この作品をシェア

pagetop