ぼくらのストロベリーフィールズ
☆
ナズちゃんは、一吾くんまだ休みー? つまんなーい、と何度も口にしていた。
一吾くんは学校も無断で欠席しているようだった。
「のばらー、一吾どこいったのー?」
トイレの帰り、一吾くんの子分的な扱いになったヒュウガくんに呼び止められた。
「私に聞かれても……」
「だっておまえら一緒に住んでんでしょ?」
「ちょっと、しっ! それ内緒だから!」
がやがやしている昼休みの廊下は、たまっている人と流れる人が半々くらい。
私はばしっとヒュウガくんの肩を叩き、彼の口を制した。
「いでっ! お前は昔っから変わんねーな。あ、尚紀は何か知ってんの?」
――あ!
『なんかあったら尚紀のこと頼って』
そうだ。
ちょっと気まずい状態だけど、尚紀くんだったら何か知ってるかも!
彼のクラスに行こうとすると、ヒュウガくんは、
「あとさー、お前かわいい友達いんじゃん。そいつ彼氏とかいんの?」
と小声で聞いてきた。
「かわいい友達……? あ、もしかしてナズちゃんのこと?」
「そうそう。俺ちょっと仲良くなっちゃったんだよねー」
――はい?
そういえば、一吾くんの友達と仲良くなった、ってこの前ナズちゃんが言ってたっけ。
それってヒュウガくんだったんですか……。
「残念。ナズちゃんは一吾くん狙いだよ」と伝えると、
「え~~~まじ? 俺超タイプだったんだけど」と言って、ヒュウガくんはずるずるとしゃがみこんだ。
ナズちゃん、戦略的に男をトリコにしている。恐るべし……。