ぼくらのストロベリーフィールズ
「ぷっ……何が『助けてくれてありがとうのキス』だよ」
「ちょ! やめてよ恥ずかしいじゃん。てかそっちこそ」
「おれはのばらのまねしただけ」
ぎゃー! 私は一体何をしてしまったんだ! と顔がどんどん熱くなってしまう。
構わず一吾くんは腕で口を覆って笑い続けていた。
その目じりには涙がたまっていて、胸の奥がきゅっと苦しくなった。
私が今、一吾くんに抱いている感情は、
普通の恋とか好きとか、そういうのとは少し違うんだと思う。
近づけたと思いきや、いなくなって。
触れようと思ったら、拒絶されて。
力づくで引っ張ったら、逆に同じ力で引き寄せられる。
伸びて縮んでを繰り返しすぎたゴムのように、彼の心には亀裂のようなものが入っているのかもしれない。
その部分を埋めるんじゃなくて、これ以上破れた部分が広がらないようにしたい。
できることなら、心ごと包んであげたい。
ずっと彼の近くにいたい。
この気持ちは何て言うんだろう。
一吾くんの肩にもたれながら、そんなことを考えていたけど。
「てか、そんなダサいジャージのヤツに発情しねーよ」
という声がため息とともに聞こえたきた。
う……しょーがないじゃん!
中学時代の指定ジャージは部屋着に最適なんだから!