ぼくらのストロベリーフィールズ
先に横になり、心を落ち着かせようとしたけど。
ベランダから戻ってきた一吾くんはクローゼットから毛布を取り出し、床に転がった。
「おれこっちで寝るわ」
「え? それじゃ体痛くなるよ?」
「おれどこでも寝れるから」
「でも……!」
「よく考えたら一緒に寝るっておかしくない? 別に恋人とかじゃないし」
一吾くんから至ってまっとうな言葉を発されて、びっくりするとともに、胸が痛んだ。
「私は隣にいてくれた方が安心する……」
と言いかけたが、彼からの冷たい声にさえぎられた。
「おれはのばらのことそういう対象に見たくない」
それっきり。
一吾くんは眠いと言って、私の逆側を向いた。
「……っ」
少しは私に好意を持ってくれているんだと思っていた。
抱きしめてくれたり、手をつないでくれたり、キスしてくれたり、道ばたで抱き寄せられたり。
父の前で『おれの家で預かっていいですか?』と言ってくれたり。
1つ1つ思い出すだけで、私はドキドキが止まらなくなる。
でも一吾くんにとっては、何でもないことだったんだ。
きっと昔からモテてただろうし。
簡単には心が動じなさそうだし。
ああ、すごい自意識過剰じゃん、私。
バカみたいだ。
一吾くんにバレないように、1人で静かに泣くことしかできなかった。